TREATMENT 施術のご案内

A. 顔面輪郭形成術

下顎角形成術の実際

外科医として手術を極めようと思いますと、手術後の患者様の不満を徹底的に分析すべきです。
私は理想的な結果を得るための課題について研究し、20年間にわたって術式に改良を加えてまいりました。
現在私の行っている方法をご紹介いたします。

手術の準備

3次元実体模型は滅菌した状態で手術中に使用して計測できるように前日から滅菌して準備をしておきます。

術前デザイン

手術前に患者様には診察室で最後の手術デザインの確認を行います。患者様の最終的な希望を確認した上で、顔に実際にマーキングをさせて頂きます。
1) 下顎骨の輪郭
2) 最大横径の部位
3) 咬筋の範囲とRFによる焼灼部位、耳下腺管の安全領域
4) 顔面神経の走行
5) 頬脂肪体の範囲、中心部
手術中にこれらのマーキング部位は重要な役割を果たします。

麻酔

麻酔は全身麻酔で行われます。口の中からの手術になりますので、麻酔の管は鼻から(経鼻挿管)挿入します。
術野に0.2%リドカイン(100万倍エピネフリン)を散布します。これにより疼痛緩和して、全身麻酔薬の震度を浅く保つことができます。さらにエピネフリンの血管収縮効果にて出血量を最小限に抑えるように努めます。

次に口唇ガードというシリコンチューブを口唇に縫合します。手術中は骨切り用の電動バーや骨鋸が熱を持ちますので、接触した際に火傷を起こす可能性があります。そこで当院ではまさかの事態にも対応するため、手術前に器械が接触する部位には必ずシリコンによるガードを縫合しています。もちろん手術終了時にすべて外します。

切開、骨膜下剥離 

下顎枝前縁粘膜切開は、上方は耳下腺管開口部を避けて、下方は第一小臼歯部まで4㎝程行います。
Wide chin、square faceなどのオトガイ結節を越えた骨切りが必要な症例では、左右の粘膜切開を中央でつなげます。
粘膜切開時に注意すべきは、第一小臼歯部あたりで粘膜直下にオトガイ神経の太い分枝(Buccal-labial branch)が見られるため、いきなり深くメスを入れずに、必ず神経を確認し剥離・温存することです。

続いて骨膜下剥離で下顎骨を展開しますが、角部においては下縁、後縁に強く付着している咬筋、内側翼突筋(Pterygo-masseteric sling)を丁寧かつ確実に剥離します。下顎縁剥離子(Sling stripper)の使用が推奨されていますが、下顎枝後縁で内側翼突筋が裂けやすいため実用的ではありません。
私はスプーン型リトラクターにて角部後縁を後下方に軽く押し込むような形で剥離していますが、ほとんどの症例で容易に剥離することができます。

拡大下顎角骨切り術 :横顔(側貌)改善術

術前デザインに沿って3㎜のラウンドバーで骨切り線に溝を掘っていきます。
私の術式の特徴ですが、コントラアングルドリル(直径1.5㎜、長さ25㎜)という直角に曲がったドリルを使用することです。
スプーン型リトラクターで術野を展開し、内板の裏面を保護しながらドリル刺入を次々に進めていきますが、コントラアングルドリルは口角で邪魔されることなく自由に角度調節ができ、骨孔はおよそ意図した通りに開けることができます。
ドリルホール間隔は、1㎜程度で密に穴あけを行います。

術前の予定ラインに沿って、骨切りを行っていくわけですが下顎枝後縁が見えない場合には内視鏡でのアシストを行います。
下顎枝後縁は多くの症例で盲目的になることが多いので、内視鏡付きリトラクターを用いて骨切りの際の垂直高を正確に決定しています。
角部骨切り術の際に、下顎枝上方に向かって垂直方向に骨片を過剰切除した場合には、下顎角が喪失し、非常に不自然で奇異なレリーフとなります。下顎角を目立たなくすることが手術の目的であり、なくすことではないことを術者は肝に銘じる必要があります。

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・ 内視鏡: φ4㎜ , 30‐degree angle scope
(Olympus Corporation,Tokyo,Japan)
・ リトラクター:SYNTHES Maxillofacial
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前方は角度調整が可能ですので、オシレーティング骨鋸でできる限り入射角を鋭角にして段差のない骨切りを行います。
前方においてはオシレーティングソーによる骨切りを行いますが、密にあけた穴(ドリルホール)が切り取り線の役割をなして、最後は弱彎の骨ノミ(オステオトーム)で軽くたたくだけで骨切りを完了します。

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外板切除(分割法)

下顎骨体部ならびに下顎枝を出来るだけ薄くしたいわけです。ただし骨の厚みは個人差があり、下歯槽神経の走行の深さが大きな問題となります。
CT, 3次元実体模型から神経走行の深さを0.1㎜以下の誤差で測定します。

下歯槽神経が外側皮質骨のすぐ裏側を通過している場合には外板を全層で分割切除すると、下歯槽神経管が解放してしまい、神経断裂、神経損傷など引き起こしかねませんので、その場合だけはラウンドバーでの削骨にとどめるのが無難です。

一方、裏側に2㎜以上の髄質部分が存在する際には、外板の分割切除を行います。
前方は下顎枝前縁から外斜線に沿って下降し、Obwegesar-DalPont法に準じて、下顎下縁まで縦方向に皮質骨に溝を掘ります。
その際に私はピエゾサージェリーという、超音波削骨器械を使用しています。
上方は咬合平面と一致した範囲とします。この範囲で外板の分割を行いますが、周囲の境界は出来る範囲はピエゾで行い、下顎枝後縁はリンデマンバーで海綿骨が出る深さまで(皮質骨だけに溝)掘るようにします。

次に下歯槽管の5㎜手前までは、レシプロケーティング骨鋸を用いて外板の裏面に沿わせて骨切りを行います。
それより遠位では特殊チーゼルにてゆっくりと骨を分割していきます。
また神経が浅く走行している場合にはセパレーターを用いて外板を分割していきます。
これで外板だけ分割することを終了し、前方、上方の皮質骨は可及的にラウンドバーで削骨します。
 

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第52回 日本形成外科学会_輪郭0423発表データ.056
切除骨片例

補助的手術

適応、希望のある患者様に対して、より良い結果が得られると判断された場合に行う手術です。
統計的に見てみますと、咬筋減量術は本手術を受ける方の80%、頬脂肪体切除は30%ほどの方に適応があります。

咬筋減量術(RF)

咬筋が厚い場合には、咬筋を薄くするためにRFによる減量を行います。
手術前にRFで焼灼する範囲と主たる部位をマーキングしておきます。
これは患者様には座った状態で奥歯を強く噛んでいただいた状態でマーキングします。
手術中の寝ている状態では咬筋の形が変形しているため、もっとも厚い部位など正確な判断が難しいためです。

手術は口の中からのアプローチであるため、皮膚表面のマーキング部位から23G の長い針をマーキングしたポイントから刺した状態で、RFプローブの先端を直接咬筋に接触させ、本の少しだけ筋肉内に差し込み、焼灼します。
顔面神経の損傷、耳下腺管の損傷を避けるために咬筋の焼灼は術前のマーキング忠実に、慎重に行います。
もちろんプローブは筋肉の内側を維持するように注意が必要ですが、直視下における作業であれば心配ありません。

なお外科的な咬筋切除術は、合併症として顔面神経下顎縁枝損傷の可能性があり、さらに過度の萎縮による変形、咀嚼時に皮膚表面に現れる凹凸不整など予期不能で非可逆的な変形をもたらすこともあり、その適応には慎重を要します。

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頬脂肪体切除術

The buccopharyngeal fascia and buccinator fibersを確認し、頬骨弓の下側を皮膚上から押しますと、頬脂肪体が判別できます。
鋏を左右に開きながら、脂肪体を引き出して、たやすく突出してくる部分だけをペアンでクランプして、バイポーラーで凝固しながら切離、摘出します。

閉創 Closure

最後にしっかりと止血を確認し、よく洗浄したのちに、ペンローズドレインを挿入して、5-0吸収糸で粘膜縫合して手術を終了します。 Dressing 頬にはガーゼを集めに当てて、弾性包帯で緩やかに頬を圧迫します。手術直後の出血を最小限にし、血腫を防止し、腫れの軽減に努めます。

その後麻酔の管を抜き、患者様には目を覚ましていただきます。

 

考えうる合併症

1) 下歯槽神経、オトガイ神経損傷
体部削骨時に高速回転で外板を削り終えた直後にバーが深く入り込み下歯槽神経を損傷する可能性があります。
低速回転で外板ぎりぎりまでで削骨をとどめるのが安全ですがそれでは効果が期待できません。
またリトラクターでオトガイ孔付近の神経周囲を展開する際には、オトガイ神経は愛護的に取り扱い、過度の牽引は慎みます。
さらに粘膜切開の際に小臼歯下方において浅くメスを入れないと分枝(Buccal-labial branch)を損傷する可能性があります。

2) 感染
2~5%程度の発生頻度ですが術直後に感染は起こりえます。
感染発見後に数回通院してもらい、洗浄、抗生剤投与で完治します。
また外板切除後の髄質からの出血に対してbone wax使わざるを得ない場合がありますが、その際には最小限の使用とするのが無難です。Waxは感染源となりやすいのです。

3) 口唇熱傷
骨切りの際に器械(ハンドピース)の過熱により上口唇、口角部での熱傷をおこすことがあり注意が必要です。
ペンローズ・ドレーンをガードとして口唇に縫合することにより予防できます)。

4) 顎下腺レリーフ出現
本来は下顎骨の裏側に位置している顎下腺が、下顎下縁の骨切り後にそのレリーフが出現することがあります。
予防としては、術前に顎下腺に位置を確認して、下垂している症例では過度の骨片切除を慎むしかありません。

その他、術後形態として過矯正、過少矯正、左右非対称、輪郭不整などが見られることもあります。良好な結果を得るためにはある程度の経験を要します。また大量出血、顔面神経麻痺、骨折などの報告もみられます。

術後経過

1) 腫脹
おおまかな腫れは2~4週間程度(術前と同じぐらいに戻るという意味)、細かな意味での完成は6ヶ月を要します。
尚、当院は腫脹軽減目的にて手術終了時にボツリヌス毒素A(BOTOX)の咬筋注射を行っています。
また術後2週間はフェイスバンテージによる圧迫を指導しています。

2) 下口唇、オトガイの知覚鈍麻
オトガイ結節を越えた骨切り(オトガイ+エラ)を行った場合には、下口唇からオトガイにかけて知覚鈍麻が出現することがあります。
程度に関しては個人差がありますが、通常は2週間~3ヶ月ほどで回復します。

3) 開口制限
術後2~4週間程度、開口制限が出現します。
術後1週を過ぎてから自主的に開口訓練を行ってもらうことにより、すみやかに回復します。

手術の限界と補助的手術の必要性

1) エラの改善を希望される患者の多くは、正貌における顔面横幅の減少を期待しています。
具体的要望として「ほっそりとした卵型の輪郭」で「できる限り小顔に」というものです。
顔面横幅の減少手術である下顎骨外板切除術(体部削骨術)においては下歯槽管の走行により、その切除量は限定されます。
さらなる減少を希望される場合にはボツリヌス毒素Aの注射を反復的(6ヶ月に1回程度のペース)に継続していく必要があります。

2) 正貌における改善手術の際に注意すべき点は、オトガイを含めた下顎骨全体を総合的に評価することです。
例えば、オトガイが大きい(Wide chin)症例に対し、下顎ラインが細くなった場合には、かえってバランスが悪くなることもある。
このような症例では、オトガイ形成まで含めた下顎形成術を検討する必要があります。

3) 中・高齢者に対して下顎角形成術を施行した場合には、術後jowlが顕著に現れ、満足すべき結果が得られないことがあります。
骨格縮小に伴う皮膚の弛みが生じる可能性があり、その際には改善手術としてFace lift手術が必要になることもあります。

症例

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Vライン形成術:エラ+オトガイ狭小術

下顎全体をひとまわり小さくしたいとのことで、Vライン形成術としてエラ、オトガイの両者の手術を行いました。
オトガイは中央部での長さはそのままで、できるだけ細くとの要望で垂直骨切りによるオトガイ狭小術(中央骨片12㎜切除)を行っています。
エラに関しては、拡大下顎角切除+外板切除+咬筋減量+バッカルファット切除術を行っています。
オトガイ孔下方で下顎下縁のラインを整えることにより、かなりシャープな印象のVライン形成となっています。
モニターさんは同時に頬骨縮小術も行っております。

 
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下顎形成術(エラ):拡大下顎角切除+外板切除+咬筋減量+バッカルファット切除

下顎が大きいため、正面顔でほっそりしたいとのこと、斜め顔でも頬の面積が広く、3次元的に小顔手術を希望されました。
手術後CTより分かるように手術範囲は前方はオトガイ孔の少し手前まで骨を削り、正面顔で可能な限り変化を出しています。
正面のみならず、斜め顔でも小顔効果ははっきりうかがえます。

 

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下顎形成術(エラ):拡大下顎角切除+外板切除+咬筋減量

男性患者であるため下顎角は意識して自然なエラを残しました。私の開発した方法の特徴(下顎枝後縁に向かって水平方向の骨切り)ですが、このようにエラを完全に切除するのではなく、程よく残すことができるのです。
正面顔では、外板切除、咬筋減量により角張った印象はなくなり、ほっそりとした顔型になりました。

 

 

 
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下顎形成術(エラ):下顎角切除+外板切除+咬筋減量

正面顔でホームベース型の顔型を改善したいとのことでした。術前後のCTからもわかるように、下顎角切除は外側にはねている部分(フレア)だけであり、ごくわずかです。
正面顔での劇的な変化は外板切除と咬筋減量による効果です。

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