鼻の中では、地味な部位が鼻柱です。単独で行うことは決して多くないのですが、鼻尖、鼻翼と密接な関係にあり、美しい鼻を形成するには、鼻尖、鼻翼、鼻柱のバランスが重要です。鼻の穴の中からアプローチして、鼻唇角部の皮下に軟骨を移植します。この施術の最重要ポイントは、皮下に移植するということです。また、シリコンインプラントを使用することも可能です。但し、鼻唇角鋭角の主な原因が上顎前突の場合は、上顎後退術も検討します。
鼻柱は鼻形成術において評価、討論されることが少ない部位であり、鼻の中では他部位と比べて地味な存在であり、軽視されがちです。確かに鼻柱だけ単独で手術を行うことは決して多くはないのですが、鼻尖、鼻翼とは極めて密接な関係にあり、“美しい鼻”を形成するためにはこれら3部位の絶妙なバランスが要求されます。
鼻翼と鼻柱との位置関係(ACR)は正面のみならず、側面からも重要です。
美しいACRすなわちとは、正面では両側鼻翼基部を結んだ線より鼻柱がほんの少しでも下方(尾側)にあることが重要です。すなわちこれら3点を結んだ三角形が下向きを頂点とする二等辺三角形であることが重要です(columellar-alar
triangle)
鼻柱基部が鼻翼基部より頭側に位置する場合には、鼻柱後退=retracted columellaと呼ばれ、鼻尖の太さ、鼻翼の張り出しが強調されるため良好な形態とは言えず、美容的には治療の対象となります。
なおcolumellar-alar triangleは、鼻柱、鼻翼の相対的な関係であるため、改善手術を計画する際には、個々の症例に応じて鼻柱を下降させるべきか、鼻翼基部を上昇させるべきかを決定します。その際、鼻全体の長さ、鼻柱基部から上口唇(赤唇)までの長さ、などを評価する。但し実際には外科的に鼻翼基部を上昇させることは難しく、鼻柱を下降させる手術が適応になることが圧倒的に多くなります。
側面から評価する際の鼻唇角は重要で鋭角過ぎる、すなわちめり込んでいるような状態では口唇とのバランスが悪い。鼻柱基部と上口唇との相対的関係によりますが、上顎前突 があることも少なくなく、その場合には、Le Fort1型骨切り、上顎分節骨切りが適応となります。鋭角過ぎる鼻唇角を改善すべく鼻柱基部の増大について後述します。
臨床的にはretracted columella、hanging columellaが主に治療の対象となります。但し鼻尖、鼻翼とのバランスが重要であり、複合手術の一環として行われることもあります。
鼻柱のretractionあるいはhangingは、鼻を側面から見た際にも目立つ。retracted
columellaは、鼻柱の後方3分の2が鼻翼縁より下方向に突出していないため、側面から鼻柱が見えず、短鼻が強調されます。hanging
columellaは、逆に側面で鼻翼縁より下側に過度に鼻柱が見える状態です。患者様の訴えとしては鼻孔の中が見えすぎるといった表現をとります。しかしこれら側面像は、鼻柱と鼻翼との相対的な関係であるため、鼻全体のバランスから鼻柱あるいは鼻翼のどちらが治療の対象になるのか見極める必要があります。
鋭角の程度にもよりますが、はじめに6×6ミリ大の耳介軟骨を3~4枚積み重ねて6-0ナイロンで縫合し、移植片を準備します。鼻腔内よりアプローチして鼻唇角部の皮下にポケットを作成して、移植片を適正な位置にナイロン糸で引き出して、スプリント(ギプス)に固定します。本法の最重要ポイントは骨膜上ではなく、皮下に移植する!ということです。
また移植材料として、自家組織ではなく、シリコンインプラントも適応できます。6mm大のサイコロの様に立方体として、最後にメスで過度を落として適正位置にpull-outします。
なお上顎前突が鼻唇角鋭角の主たる原因である場合には、本法の適応とはならず、上顎後退手術を検討します。
retracted
columella(鼻柱後退)を合併している場合には、耳介軟骨を左右から2枚(20×15mm程度)採取して、鼻中隔延長を同時に行います。移植軟骨のデザインは鼻柱ー上口唇移行部で下に凸となるようにします。アプローチはオープン法を選択します。